前回の『冬特集』では《夏から冬になった男》と題して
「山下達郎」さんのことを中心にして一文を書きましたが、
今回は「山下達郎&竹内まりや“夫妻”」の【共同制作】
に付いて書きます。
特にここでは最近の2枚のアルバム【souvenir】と
【Bon Appe`tit】に焦点を合わせて、私なりに【夫婦共同
制作】を検証して行きたいと思います。
まず2枚のアルバムのデータですが、
☆【souvenir】(スーベニール・語源 フランス語 ━ 記念品)は、
2000年11月22日発売のライブ音源盤。(会場は武道館他)
☆【Bon Appe`tit】(ボナペティ! ━ たっぷりと召し上がれ!)
は、2001年8月22日発売の最新オリジナルアルバム。(スタジオ録音)
両アルバムのプロデュースと全ての曲のアレンジを「山下達郎」が
担当しています。
【souvenir】は、「山下達郎」と結婚して以来ずーと専業主婦
アーティストを続けて来た「竹内まりや」が、18年7ヶ月ぶりに
ファンの前に帰って来て開いた『ライブコンサート』が音源の、
まさに記念碑的アルバムです。
『不思議なピーチパイ』から『カムフラージュ』まで、最初と
最後の《盛り上げようロックンロール曲》以外は、彼女のヒット曲
がずらりと揃ったベストアルバム的ライブアルバムですが、バック
に「山下達郎」率いるスパーバンドの最高の応援を得て、スタジオ
録音にも勝るような情感で、名曲の数々を歌い綴っています。
おまけに《感涙の》と評された「山下達郎」との“デュエット曲”
『 LET IT BE ME 』まで付いて .........
【Bon Appe`tit】は、‘1993年日本レコード大賞ベストアルバム賞
受賞作品’の【Quiet Life】以来9年振りのオリジナルアルバムで、
アルバムタイトル“ボナペティ! ━ たっぷりと召し上がれ!”の
通りに《ベストを超えたオリジナル》と銘打って発売された、
「竹内まりや」の世界をお腹いっぱい聞ける、バラエティー
(大盛り大サービス) なアルバムです。
さて、二人は「1982年4月6日」に結婚して、これ以降本格的な
【夫婦共同制作】に入るわけですが、本題の2アルバムの検証の
前に“シンガーソング・専業主婦”「竹内まりや」と“音楽職人”
「山下達郎」との栄光の軌跡に少し触れてみたいと思います。
まず、二人が結婚した前後は“夏だ、海だ、達郎だ”と言われていた
「山下達郎」のいわゆる全盛期でした。
結婚前年の暮れから休業していた「竹内まりや」は、しばらくは
大活躍する夫の影で“専業主婦”に徹していたようですが、3年の時を
経て「山下達郎」が「取締役兼芸人」をしている『MOONレーベル』へ
の移籍をはたし、夫の全面協力と言う“水”を得た“魚”の「まりや」
は、その後素晴しい才能を開花させて、ビッグへの道を歩み始めます。
1984年4月25日 - 再デビューアルバム【Variety】発売。
このアルバムから全曲が「竹内まりや」の作詞作曲。+ 全アルバム
のプロデュースと全ての曲のアレンジを「山下達郎」が担当。
1曲目『もう一度』の伸びやかな「竹内まりや」の歌声と、「山下
達郎」一人多重録音の大きめのバックコーラスが、これから始まる
二人の【共同制作】を、声高らかに宣言しているようです。
1987年8月12日 - 【Request】発売。
あらゆるヒットチャートの1位を獲得し、5年経ってもチャート・イン
していたという記録的なロングセラー・アルバム。「竹内まりや」を
本物のビッグに押し上げたとともに、本人にも大きな自信を持たせた。
1992年10月22日 - 【Quiet Life】発売。
「竹内まりや」の作詞作曲もいよいよ円熟味をまして、何気ない
日常から味わいある歌を紡ぎだしている .....
先にも触れた‘1993年日本レコード大賞ベストアルバム賞受賞’は、
「達郎がどういうアレンジをしてくれるかが楽しみ」と本人も言う
【夫婦共同制作】が勝ちとった栄冠です。
1994年7月25日 - 【Inpressions】発売。
再デビューから10年目に発売されたベスト・アルバム。
前三作より選ばれた曲と『リンダ』で構成されている。
余談ですが、ここまでの10年間とその後は、「山下達郎」が“アナ
ログ録音”から“デジタル録音”へと変わって、新しい音作りの為に
模索格闘し続けた時期と重なっています。
私には、「山下達郎」が自分のオリジナルアルバムで実験した数々の
成果を「まりや」の曲のアレンジに生かしていると思うのですが、
如何でしょうか? ..................
1981年の暮れに休業して以来、結婚、再デビュー、そして輝かしい
業績を重ねつつ“シンガーソングライター”として素晴らしい成長
を遂げて来た「竹内まりや」ですが、この間、テレビにはまったくと
言っていいほど出演せず、プロモーションビデオと写真集を出した
くらいで、自ら公けの場に現れることは殆ど有りませんでした。
そんな「竹内まりや」が 2000年7月11日に、18年と7ヶ月ぶりに
『武道館』のステージで、ファンの前に戻って来たのです。
この『武道館ライブ』の音源がラジオから流れ、それに反応した
ファンからのリクエストで【souvenir】の発売が急遽実現した
そうですが、このライブもやはり「山下達郎」のバックアップが
有ってこそ、はじめて実現した企画ではなかったかと思います。
【souvenir】の最後に二人の“感涙のデュエット曲”があります
が、「竹内まりや」が「山下達郎」を舞台の前面に呼ぶ時におっとを
讃えてこう云います ....... 「結婚してからずーと音楽活動を続けられ
たのもこの人のおかげです」と、━ この言葉が率直に示す通り、
「竹内まりや」の音楽にとって、人生と同じように夫「山下達郎」の
存在が不可欠なのです。
それにしてもこの『ライブアルバム』にとって、「山下達郎」率いる
スパーバンドの存在は実に大きいと思います。
名アレンジャーにして名プレイヤーの「山下達郎」と、彼の音楽活動を
20年以上支えてきた腕っこきの面々(ミュージシャン達) ・・・
このバックバンドがあればこそ「竹内まりや」も安心してシァウトし、
スタジオ録音にも勝る情感を込めて、最後まで気持ちよく歌い綴る
ことが出来たのだと思います。
ゆえに、このアルバムにはスタジオ録音よりも気に入っている曲が
数曲有りますし、「まりや&達郎」の息の合った『プラスティック
・ラブ』などは、まるで【 二人のビッグショー 】です。
ここまで『アルバム』だけを取り上げて書いて来ましたが、
当然ながら、結婚後も《シングルヒット》を何枚も飛ばしています。
【Bon Appe`tit】には、ベストアルバム【Inpressions】以後の7年
間に発売された5枚の『シングル』から8曲が収められていて、
『ベスト盤』的要素も強いのですが、中でも『シングル』で大ヒット
した『カムフラージュ』は、「まりや & 達郎」の【夫婦共同制作】
が生み出した傑作、遂に辿り着いたひとつの頂点だと思います。
皆様にも色々と思うところが有ることでしょうが、最後にこの『カム
フラージュ』を検証して、この一文を締めくくりたいと思います。
こんなに長々と文章を書いているのにお恥ずかしいことですが、
私は『カムフラージュ』(1998・11・18 発売)と言う曲が『シングル』
で出ていてヒットしていることを知っていましたが、実際に聞いたの
は昨年(2001・1)のことで、【souvenir】の中で聞いたのが初めて
でした。(スタジオ録音は【Bon Appe`tit】で初めて)
『カムフラージュ』でまず何と云っても印象的なのが、イントロと
エンディングの両方に響く、「山下達郎」の一人多重録音のコーラス
です。(特に最後の長く尾を引くハーモニーの余韻が素晴らしい!)
更に驚くべきは、あの重厚に聞こえるサウンドの殆んどを「山下
達郎」一人の多重録音とコンピュータ&シンセサイザープログラミ
ングで作り出していることです。(助っ人は、アコースティクピアノ
とコンピュータ&シンセサイザープログラミングのプロの二人だけ)
出す度に“ヒット”を飛ばす「竹内まりや」のレコード制作に、
予算をケチる筈がありません。
もうこれは「まりや & 達郎」のこだわりなのです。
出来る限り二人だけで作りたい思う【夫婦共同制作】への
こだわりなのです。
もちろん「達郎」の才能だけをたたえる積もりはありません。
円熟味を更に増した「まりや 」の作詞作曲と情熱を秘めた
しっとりとした歌声が、この曲の質を根本から高めているのです。
才能有る二人の融合は、1足す1ではありません。
2掛ける2以上、数乗倍の測り知れない結果をもたらします。
『カムフラージュ』は、かの名曲中の名曲『駅』をも凌ぐ名曲、
【夫婦共同制作】が到達したひとつの≪高み≫だと思います。
お互いに深く尊敬し合っている「山下達郎」と「竹内まりや」
『Doo Wop』『ソウル+R&B』『サーフィン+ガレージ
・ミュージック』など、マニアックで泥臭い『アメリカン・
ミュージック』をルーツに持つ「達郎」
『ビートルズ』&『懐かしのアメリカン・ヒット・ソング』の
申し子「まりや 」・・・
『アメリカン』と云うところだけが共通の、ルーツも個性も全く違う
二人ですが、何れにしても“ポップスの真髄”を肌身で知っている
この二人の融合が「これから更にどんな作品を生み出して行くのか」
ますます興味が尽きないところです。
2002・2・25 オーナー もりやま
★【souvenir】の読みに「スーベニール」と書きましたが、
英語の発音がそうで無いことは知っています。どこかでそう
書いてあったのを見ましたので、使わせて頂きました。
このページを作るのに 参考にさせて頂いた、 「山下家 ML Home Page」 へのリンクを付けてお きます。 ファン有志で 創っているページだそ うですが、静かな中に も、「達郎」「まりや」へ の熱い想いが伝わって 来る、純なページです。 ↓バナーをクリック |
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そうそう、何故“Winter Lovers”なのか書くのを忘れていました。
“Winter Lovers”は先の『カムフラージュ』と一緒にシングルで
発売され、【Bon Appe`tit】でも『カムフラージュ』の次に収録さ
れているのですが、あまりにも『カムフラージュ』がいい曲の為
に、陰に隠れたかたちに成ってしまった素敵な曲です。
私は、この“Winter Lovers”を、彼の名曲「山下達郎」の
『Christmas Eve』の応答歌だと思っています。
ベースの流れやリズムも彼の名曲に呼応していて、『Christmas
Eve』と「対に成り」「並び称される」ヒット曲を目指して、ちょ
っぴり作為の有る【夫婦共同制作】で創り出された曲だと思います。
♪「 ... 君はきっと来ない一人きりのクリスマス・イブ .... 」♪
の彼が、今度は何処か高原のリゾート地で愛しの彼女と愛を確かめ
合い、また次の冬の再会の約束をして去って行くのです。
でも今回はずっと会えない訳じゃない ・・ とり残されたホームの
隅で彼女は少しだけ泣いたけど、平気なのです。